税理士の高橋寿克です。

freee、マネーフォワード(MFクラウド会計)、弥生会計(弥生のオンライン)、ハイブリッド会計Crew(クルー)が登場してきました。

クラウド会計ソフトのfreeeのテレビコマーシャル(CM)も始まりました。

今年は、クラウド会計ソフト元年でしょう。

税理士法人TOTALでも、freeeを使うお客様が実際にだいぶ出始めています。
マネーフォワードも飲食店等を中心に導入を進めています。
従来から使っている弥生会計はクラウド版も、もちろん引き続きサポートしています。

さて、

1. クラウド会計ソフトのメリット

 (1)初期設定さえきちんとすれば、処理は短縮できる。
クラウド会計のメリットとして書かれているのは
(freee のサイトから拾いました)

 全自動
 経理の時間が大幅に減りました
 簡単に確定申告ができる

うーん、
残念ながら、全自動は無理!です。

でも、預金をネットバンキングから読み取れますし、クレジットカード利用情報にも対応しています。
「個人」の場合、ネットバンキングの利用料がかからないのでお得です。
(もっとも、頻度が多くて、事業用だとバレると法人扱いで有料になりますが)

設定と、その後の適切な運用ができれば、業種によりますが20%以上の省力化ができます。
ネット通販あたりだと、一番効果が出ます。
また、飲食業のように、現場が忙しく、事務に人手が割けない場合、レジ選びを上手にすれば省力化できます。

ネットが得意でない方には「簡単」ではありません。
このため、IT業界の方や、インターネットに強い方の利用が多くなっています。

(領収書アプリも一部にありますが、使い勝手を考えると大量のデータにはまだ向きません)

 (2)ソフトの管理が必要ない
サーバー・パッケージソフトを「購入」する必要がないので最初に払う金額は小さくなるし、システム構築は不要で、使った分だけ、効率的に支払うことになります。
ソフトウェアのアップデートは自動でなされるので、バージョンの問題はないし、メンテナンスは不要です。
このため、一度しっかり導入してしまえば、社内にコンピューターの強い人が要りません。

 (3)場所を選ばない
クラウドなので、自宅でも、職場でも、(タブレット端末等で)職場でも利用が可能です。

2. クラウド会計ソフトのデメリット

 (1)実は、パッケージソフトより高いことも多い
残念ながら(当たり前ですが)、普通に使う場合は「無料」にはなりません
「無料」なのはデータ保存が1月とか、青色申告未対応とか、商用では事実上使えない前提になっています。
無料版は、むしろ従来からある 無料サンプルに近い位置づけです。

クラウドソフトは、共通して、使った分を月額・年額で払う形態になっています。
言い方を変えると、利用する限り、確実に課金されます。

パッケージソフトは、保守契約を結ばなければ、最初に払うだけで済みます。
毎年、パッケージソフトもバージョンアップしますが、正直、大した機能強化は通常はありません。
消費税改正が先送りされたので、法人の場合はしばらく保守契約は不要です。

例えば、代表的なパッケージソフトである弥生会計の実売価格とfreeeを比較してみます。

・法人用 
 弥生会計 30,219円(amazon)
 freee   月額 1980円+税
  又は 年額 19,800円+税
で1年半で弥生会計(パッケージ)の方が安くなります。

・ 個人用
 やよいの青色申告 9,468円
 freee   月額 980円+税
   又は 年額 9,800円+税     
で1年で弥生会計(パッケージ)の方が安くなります。
(確定申告機能を考えると、個人用はパッケージソフトもバージョンアップした方が無難です)
    
実際には、弥生会計よりも安いパッケージソフトはいくらでもあります。
(もっとも、安いソフトにもそれぞれ問題はあります)

 (2)新しいソフトなので作り込みが甘いことがある
どうしても、新しいソフトなので、従来あるような当たり前の機能が制限されていたり、ひどいと合わなかったり、間違っていたりするケースもあります。
弥生の岡本浩一郎社長が言っていましたが、ソフトのバグ取り、整合性を取るのは大変なようです。
バグとまでは言えませんが、自動計算すべきところが手動だったりするとユーザーが知らないうちに間違えることもあり得ます。
もっとも、マネーフォワードやfreeeは、従来の蓄積がない分だけ設計に自由度はありますし、一生懸命開発を進めています。
利用者が増えてくれば、いずれ、そう遠くない将来、機能的な問題は解決する日が来るでしょう。
黎明期なので少しの間、暖かな目で見守りたいと思います。

 (3)通信環境に依存する
最近では回線は早くなってきていますし、スタンドアロンでPCを使う人はほとんどいないでしょうが。
どうしてもPC単体よりは反応が遅くなります。大量のデータ入力が必要な会社には向きません。

 (4)自分一人で使うのは意外に難しい
初期設定するのはかなり大変です。会計の知識も、ネットの知識もそれなりに必要です。登録すれば自動で簡単にできるわけではありません。
このため、クラウド会計ソフトを実際に使っているのは、IT業界の方、ITに強い方・新しいものが好きな方が多く、これに効果が大きくて人材もいる中堅企業の一部が加わります。


実は、会計事務所のスタッフでも慣れていないとクラウド会計を嫌がったりします。
小さい会計事務所、高齢のスタッフが多い会計事務所では対応しきれません。

税理士法人TOTALでは「freee」、「MFクラウド会計」、「弥生会計(弥生オンライン)」、それから従来からある「発展会計」に対応しています。
それぞれに一長一短があり、お客様のニーズにあわせて利用しています。

  宣伝でした(笑)


今のところ、どのクラウド会計ソフトが勝ち上がるか、私にもわかりません。

群雄割拠の戦国時代 

    あるいは 

freee、MFクラウド会計、弥生オンラインの三国志
 
    というべきか

実は、クラウド会計ソフトはすでに何社かがサービス停止になっています。
資金繰りだったり、人間関係だったり、法的な争いだったり。
生き残るサービスをきちんと選ばないと後悔することになるかも。

おそらくは、クラウド会計の普及率は現状ではまだまだだと思います。
クラウド会計ソフトは通信環境に依存し、スピードに限界があり、
中小企業のITリテラシーはそこまで高くないので、
シェアはクラウド会計ソフトをすべて足しても5年後で多くて3割かな。
弥生会計をはじめとするパッケージソフトの方がまだ多いでしょうし、専用機、EXCELもまだ残るでしょう。
それでも今後は徐々に普及していくでしょうからしっかり対応していきます。

幸い、私はそれぞれの社長さんとお会いしてお話しする機会に恵まれています。
みなさん、素敵な社長さんたちです。
会社の特徴、商品の特徴、そして社長の特徴…。
なんとなく共通するものがあるような、ないような

面白いです。


次回から
freee、マネーフォワード、弥生会計(弥生オンライン) のそれぞれについて書いていきたいと思います。

 「クラウド会計ソフト三国志(1) freee 佐々木大輔社長」に続く