税理士の高橋寿克です。

freee、マネーフォワード(MFクラウド会計)、弥生会計(弥生のオンライン)、ハイブリッド会計Crew(クルー)が登場しました。
今年は、クラウド会計ソフト元年でしょう。

前回は、「クラウド会計ソフトのメリット・デメリット」でした。

ここからは3回にわたって各社(の社長)についてそれぞれ書きたいともいます。

 「クラウド会計ソフト三国志(1) freee 佐々木大輔社長
 「クラウド会計ソフト三国志(2) MFクラウド会計 辻庸介社長
 「クラウド会計ソフト三国志(3) 弥生 岡本 浩一郎社長


実は、クラウド会計ソフト間の機能や使い勝手の細かい比較はやめようと思います。
だって、クラウド会計は日々、常にアップデートされるので、今日の機能比較をしてもあまり意味がないので。

これは、従来のパッケージソフトにはないことです。
黎明期だということもあり、リクエスト・クレームをあげると比較的短期間に直してくれるメーカーさんが多いです。

今回は
衝撃的なテレビコマーシャル(CM)を始めたfreeeについて。

freee のマーケティング はすごいなあと感心させられます。

freeeの 佐々木大輔社長は あの google の出身(ex-Googler と言います。)ですから
インターネットの特徴をよく突いてきています。

ちなみに、佐々木社長は、私と同じ開成高校出身、
一橋大学商学部卒なので、我がTOTALの沓掛税理士と中学、高校、大学まで一致します。

我が母校、開成学園は
「やるなら 世のため、人のため」
みたいなところがあるのと
運動会をみんなで夢中になってやるように
個人戦よりも団体戦、組織で戦うのが得意です。

佐々木大輔社長とは、一度お会いしてお話ししたことがありますが、IT出身の社長らしいクレバーな方です。
その一方で、なんか開成健児らしいシャイさがあって妙に懐かしかった。

freeeのセールス手法は、ネットでの販売を考える上で参考になる点がたくさんあります。

1.ネットでは、「安さ」を強調した方が有利
freeeのホームページでは
「『無料』で試してみる」のボタンを真ん中に配置してを強調しています。

そういう点では、なんて言ったって社名が秀逸ですね。

freee という社名が 無料(free)を連想させるようになっている。
実際にはもちろん有料ですが
(残念ながら、無料で使えるのはかなり例外的な場合で、普通の使い方では有料になります)

価格については前回記事を参照
クラウド会計ソフトのメリット・デメリット

2.導線がしっかりしている
普通のランディングページのつくりとは異なり、google出身らしく、シンプルに、一番誘導したいところへの動線がしっかりしています。
スマホ・タブレット端末で使うことを意識していますね。

3.PPC広告を多用している
PPC広告とは、
掲載にはコストがかからず、広告が実際にクリックされた回数分だけ費用が発生する、クリック課金型のインターネット広告です。
費用対効果がはかりやすく、ライバルが少ない新しいマーケットでは有効です。
google の収益源ですね。

ちなみに税理士業界は、「税理士」などのビッグキーワードはPPCの単価が高く、当社は疲弊する消耗戦を行っています(泣

4.ネットでの評判を意識している
2ちゃんねるや知恵袋等、インターネットの掲示板への書き込みが同業他社に比べて多い。
口コミの力、ネットの力をよく知っておられます。

5.メリットをはっきり打ち出している
  経理の時間が大幅に減りました
  簡単に確定申告ができる

各社ともに装備されている機能で、ここでの他社との差はないですし、
簡単かどうかも ITが得意かどうかによるのですが、
預金やクレジットカード取引の情報を取り込む機能のメリットをわかりやすく伝えています。

freeeがテレビコマーシャルをしてくれたことと相まって、クラウド会計ソフトのメリットを広く知らしめてくれました。
それにしてもテレビコマーシャルはいくらかかるんだろう。すごいですね。

やはり、
博報堂→投資アナリスト→ベンチャー企業(CFO)→google
というキャリアから、まとまった資金を上手に調達して
テレビCMとインターネットのメディアミックスで勝負!
というのが自然なのでしょう。


freeeのCM 「ツバメの恩返し」は  こちら

「鶴の恩返し」をモチーフにして、よく出来てますね。
こういうのって、社内のセンスなのかなあ。広告代理店の力なのだろうか。
(社内だったらうらやましい)

テレビコマーシャルらしく、短時間で「言い切り」を多用して
 シェア1位! 
 全自動! 

いったいどのくらいの人が本当に利用しているのか、
有償の顧客はどれくらいなのか、
売上がいくらあるのか、
この辺は、freee も マネーフォワードも
正確な情報を出してくれていません。
もしかしたら、投資家のことを考えると出しにくいのかもしれません。
これから伸びていくのでしょう。

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追記
平成27年8月、freeeは、DCM、リクルートホールディングス、ジャパン・コインベスト投資事業有限責任組合を引受先とし、総額 35 億円の第三者割当増資を実施しました。この資金で、積極的に広告と開発を進めることと思います。
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クラウド会計ソフトのシェア一位が、
freee だという発表もあれば、弥生だという発表もあります。
どちらが正しいか、どちらも正しくないかは知りません。
純粋なクラウドとしてのマーケティング能力ならfreeeが一番な気がします。

ただ、freeeに限らず、ソフトは
全自動! というほど作り込まれているわけではありません。
(言い切ってしまえるところがIT業界の強みですね)
こちらもこれからの発展に期待します。

エンドユーザーを直接掘り起こせるfreeeの戦略や知名度は魅力的です。
当社でもお客様が増えており、順調に対応させていただいています。

法人が利用したい機能の作り込みが追いつかないのと、法人を多数抱える会計事務所とのタイアップが遅れ個人事業主の利用者が多く、法人ユーザーが弱いのが弱点です。

freeeは、シェアをネットで素早くとるため、数が多い個人零細事業主に訴求しやすいつくりになっています。
開発余力に限界があるため、使い勝手も、法人・規模がある個人が使うレベルにまで手が回っていない面もあります。

「会計」を知らない人でも使えるというコンセプトはわかりますが、
一方で「会計」は、人類の偉大な発明、経営にとっての重要な言語でもあります。
二者択一ではなく、他社のように選択できるようにしたり、バランスを取ってもいいように思います。
(そんなことはとっくに承知で開発の優先順番の問題なのかもしれませんが)

個人事業主の場合は、税務申告を個人事業主自らがすることが多いでしょう。このためターゲットは事業主本人です。
これに対して法人の場合は、難易度が格段に高く、税務申告は税理士がします。このため、会計ソフトの選択権は、会計事務所が持つことも多くなります。
ユーザーは、エンドユーザーである<事業主・法人>だけでなく、<会計事務所のスタッフ>でもあるわけです。
会計事務所の利便性を考えて、柔軟性を増してプロも使いやすいように作ってくれると会計事務所としてもfreeeをもっと選びやすくなります。
今後は、会計事務所とどうタイアップしていくのかが課題の一つかもしれません。

いつか、また佐々木社長にお話ししてみたい、お聞きしてみたい気がします。

参考) 価格表(税別)
個人事業主:
    月額980円 年間11,760円
    年額一括払い9,800円

法人:月額1,980円 年間23,760円
    年額一括払い19,800円

次回は
 「クラウド会計ソフト三国志(2) MFクラウド会計 辻庸介社長