税理士の高橋寿克です。

「税務調査に強い」税理士を売りにする税理士が増えています。

お客様(納税者)は、
「税理士が税務調査に強いのって当たり前じゃないの?」
と思っておられます。
税理士に頼んでいる以上、税務調査であまり追徴されると思っていません。

でも、実際には、東京国税局の発表によると法人の税務調査では9割以上のケースで修正を求められています。
1回税務調査が入ると平均で150万円くらいという多額の追徴税額が発生します。

このため
<税務署は「お土産」をもらわないと帰らない>
といううわさがあります。
これは税務調査で負けることを前提にしています。
でも、これって税理士が言い始めたと思われる
都市伝説」でしょう。

統計で明らかなように多くの税理士は税務調査で負けるのが普通です。
税務調査で負けると、お客様の信頼を失う危険性があります。
その不安心理を利用して? 最近では、ライセンスビジネスをする税理士・弁護士も出てきました。
ちょっとプロとしては情けない話です。

先日、「税務調査に強い」と言って売っているある税理士に、税務調査の是認(修正が一切ないこと)率を直接お聞きしました。
驚いたことに、修正ゼロはほぼ無いとのことでした。
もちろん、シビアな事案が多いせいもあるでしょうが、誇大広告の怖れもあります。

ちなみに、税理士法人TOTALの是認率はだいたい50%くらいです。
残り半分の追徴が発生するケースも比較的少額(10~20万円以内)がほとんどです。
書類をきちんと残して、税務署の指摘の際にきちんと条文の解釈で反論できれば、それほど心配しなくても大丈夫です。

人間ですのでケアレスミスはなくなりませんが、
実は、固くて保守的な運用をすれば、税務調査で限りなく100%に近く是認を取ることは理論的には可能です。
ただ、それはお客様の「節税」の機会を失うことになりかねません。

違法な「脱税」はできませんが、
合法的なグレーゾーン、「節税」は存在すると私は考えています。
自由主義社会である以上、合法的な節税は、重要な経営課題です。

どこまでが大丈夫で、どこからが微妙なのか、
そのリスクはどれくらいあるのか、否認されないための必要な準備はなんなのか。

積極的にお客様に「節税」の提案することもありますし
お客様に説明して、どこまで実行するのか選択してもらうこともあります。

税務調査対策」と「節税」をいかに両立するか。
これは税理士法人TOTALの、専門職である税理士としての最も基本的かつ重要なテーマです。

調査事案を積み重ねたり、条文・判例・文献を読んだり、国税局のOBを迎え入れたり、勉強会をしたり
より良いサービスを提供すべく、地道に日々精進するしかありません。